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あぎゃ! 衝撃的瞬間
お散歩中の瞬間だっただけに
写真など取りようもなかったのですが……

先日、はなと二人で散歩中
小さな(シジミチョウよりちょっと大きいくらい)
蝶がはなの頭上を飛び回りました。
黒くて丸い羽根で、白いラインがRを描いているシンプルな蝶です
はなが気にして、顔を上に向けると、
はなの鼻先にタッチしては飛び上がります。
その様子がなんともほほえましくて、
「そのチョウチョ、はなとあそびたいんやね〜」
と声をかけた瞬間です

パクッ!!!

はなが蝶を口に入れてしまいました。

驚きのあまり、ものすっごい大声で、

あぎゃ!!!

と私が叫んだものですから、
はなが驚いて口を開けると、
チョウチョは
ひゃああああ〜!!
と大急ぎで
はなの口から飛び出て遠くへ飛んでいきました。

あっぶな〜い
蝶を食べようとするとは!

確かにはなは我が家の庭に初めて下り立った時、
花も草も、まだ青いボイズンベリーから
タイムやミョウガのはてまで食い尽くしましたが(たった一日で)

まさか蝶まで行くとは!

おそろしい。
飢餓状態だったのは小さいころだったし、
もうあれから4か月
我が家ではたらふく、それも美味なるものを選んで
食べさせてやり、
さすがに庭の植木に手を出さなくなったと思っていたのに、
蝶を食らわんとするとは、
私も油断していました。

あの蝶も二度と犬に近づこうなどとは思わないでしょう。

まあ、思わず発したあぎゃ!!!
蝶の命が助かってよかったです。


追記
調べたら蛾だったかも。
蛾だという可能性が出て、
急にへこむ飼い主。
差別かもしれないけど、
蛾と蝶じゃあ
ファンタジー度合いが違うのよ……。
* 13:16 * comments(2) * - *
やるべきこととやってはいけないこと
はなは、
やるべきことはすぐに覚えてできるようになりますが、
やってはいけないことをがまんするのは
できないようです。

父に以前怒られてから少しの間しなかった、
テーブル上の食べ物をとる行為。
今はやっています。
それも、座卓ではなく台所のテーブルの上のものを、
ぐっと後ろ足でで立ち上がって
とってしまうのです。

まえの犬、ねねは、
一度だけ座卓からてんぷらをとって、
母親に見せに?あげに?いって
ひどくお怒られてからその後一度も
勝手に食べ物をとるということはしませんでした。

そういう経験しかない私たちですが、
はなには、こんきよく何度も言い聞かせなければ、
と頑張っています。

でも、もう、こちらが悲鳴をあげたくなる。
母のベッドの上にのってティッシュをバラバラにしたり、
テーブル上のキュウリ(料理しようとだしていたのに)
を勝手に取って、
シャクシャク食べている。

そして一番困るのが、
庭に出たらすぐに、
石や砂、木の実に花、何でも口に入るものは食べてしまいます。

栄養失調で3カ月まで育ったはな
我が家に来てからひもじい思いは一度もさせてないし、
一日4回もご飯を食べています。
身体もぐんぐん成長しています。
なのに何が足りなくて、
石や花を食べるのでしょう。

だって、みょうがの葉っぱまでむしって食べちゃうんです。
おいしくないでしょう?
味覚異常なの?

お医者さんに相談しても
「ストレス」としか返事が来ない。
一日3回の散歩、
ずっと父母が一緒にいて、
遊んでほしいと常に言うので、
父母はへとへとになるまでつきあって遊んでいます

何でも好きなものを食べ、
いつでも遊んでもらえて、
なんの

ストレスじゃー!!!


どなたか、
石食べをやめさせる方法を
ご存知でしたら教えてください。
おねがいします。
* 06:12 * comments(0) * - *
子犬のはな
はなは、おトイレの場所をすぐに覚えました。
ほとんど失敗がありません。
はなの様子を見て、父が
「こいつは寂しいんや。もう、ケージに入れたり、
土間に追いやったりするのはやめたれ」
というので、
ははは、厳しく育てる決心をあっさり捨てて、
自室に、ねねが使っていたお布団を敷き
「ええなー、ねねちゃんのお布団もらい。
 これは、はなのお布団な。ねねちゃんに
 ありがとうしとくんよ」
と、はなの寝床を作りました。
しかし、はなのおトイレは相変わらず、
土間にあります。

ある日、
「わー! こんなとこに、おしっこしとる!」
潔癖症の父が大騒ぎ。
はなは、玄関ホールでおしっこの水たまりを作っていました。
でも、「しからないしつけ」医師からきつく言われていたので、
しからないで、
玄関ホールの方におトイレシートを弾いて、
「はな、おしっこここでしてね」
と言うと、
はなは、急に怒りだしました。
「いや、べつにはなを怒ってるんじゃないよ?
 次からおしっこはここね?」
でも、はなは、文句を「うう〜うう〜うう」と
言っています。
よく考えれば、
はなは土間から上がれても、土間には怖くて下りられません。
おしっこしたくても土間に降りられなかったのです。
だから、土間の手前の玄関ホール(上がりカマチ)のところで、
漏れてしまったのでしょう。
それに気づいた私たちは、
きちんと、ホールにトイレの場所を確保しました。
すると、はなはきちんとそこでします。
おりこうさんやね〜
みんなに頭をなでてもらってご満悦です。
でも、嬉しさのあまり、走り回って、
あちこちを噛みまくり、
破壊行動に出ました。
座卓の上のご飯を目指して、
座卓に両手を載せます。
「ごら!!!」
とうとう、父の堪忍袋がさく裂。
はなを押さえつけて、両手をバチン!!!
はなは、恐怖のあまりお漏らしをしてしまいました。

それ以来、はなは、父の顔を見ると、
遠巻きにしてチビル、という癖がついてしまいました。
「折角トイレで来てたのに……」
母の言葉に
「なんや! 俺を非難しとるんか!!」
と父も険悪です。

大変家庭内の空気が悪くなりました。
近所のしつけ教室に問い合わせてみましたが、
なかなかここというところが見つかりません。
なにより、ワクチンがまだ残っているので、
他の犬と接触できないというハードルが。
でも、ねねのときは、2回のワクチンでOKだったのに、
いつのまに3回になったのでしょう。
犬の社会化期という大事な時期に家にいなくてはならないなんて。

ある晩、一人暮らしにもどった私に、
母から泣きの電話がかかってきました。
あちこちでものをこわすわ、吠えたてるわ。
じっとしていないので、父母ともにノイローゼになりそうだと。
それに、ワンワン激しく鳴くので、
そのうちご近所から苦情が来るのではないかと。

そう電話している後ろでも、
激しく吠えている声が聞こえます。
「どんな時に吠えてるの」
と聞くと、
自分のしてほしいことや欲しいものが手に入らない時に鳴いている、
いわゆる「要求吠え」のようです。
運動不足もあるのでしょう。
はなの世界は今、家の中だけ。
世界が狭いのです。
自分が王様になっているのかも。

わたしはすぐに車で戻って、
はなを抱っこして外へ連れ出しました。
もう外は真っ暗でした。

ワクチンは、2回打っています。
殆ど大丈夫なはず。
犬猫の排泄物に触れないようにすれば、
大丈夫なはずです。

外は風がびゅうびゅう吹いています。
自然が比較的多い地域です。
大きな枯れ葉が風に追い立てられて、
カサカサと音を立ててアスファルトを走ってゆきます。

はなは、急におとなしくなりました
くぅーんくぅーんと泣きます。
少し地面に下ろしてやると、
森の方をじっと見上げています。
そして、もう帰りたいというそぶりを見せたので、
また抱っこして、家に連れて帰りました。

急にはなはおとなしくなりました。
翌朝、ははが、もうひと押しとばかりに、
お隣の若い親子にはなを紹介しました
小学校に上がったばかりの上のこと幼稚園生の妹は、
はなを「かわいいかわいい」となでてくれました。
隣の奥さんは抱っこしてくれました。
近所のチワワが挨拶に来てくれました(接触はしませんが)

おトイレももう覚えたし、昨日からお手もできるようになった
そう、ははが自慢します。
みんな、えらいね〜と褒めてくれます。

その日から別の犬のように、
はなは、おとなしくなりました。
ただ、要求吠えだけが治りません。

たぶん自分の要求を伝える方法を知らないからです。

わたしは、ねねがしていた「おちょーだい」を教えてはどうか
と父に提案しました。
ねねは、ほんとうに、うんともすんとも言わない、
めったに吠えない犬でした。

ちちに左手を上げて自分の要求を伝える、
「おちょーだい」ポーズを教えてもらっていたので、
「その西瓜の甘いところを、ちょっとちょーだい」
「ご飯早くちょ―だい」
「ここの扉、あけてちょーだい」
「箪笥の上にあるおもちゃ、とってちょーだい」
すべて左手一本で、事足りていたのです。
ある時なんか、CDプレイヤーの前でおちょ―だいをしていました。
遠くで雷がなっていたようでした。
雷が大嫌いなねねは、
決まって大好きなチャングムのCD(気がまぎれるみたいです)を
かけてもらっていたのです。
人間の耳ではまだ聞こえていなかった雷が怖くて、
チャングムのCDをかけてほしいという要求でした。
おちょ―だいには、
それだけの利便性があるのです。


いつまでも私たちの心の中で生き続ける ねね


やんちゃざかりの はな


はなは、家に来て、お座りと伏せをすぐに覚えました。
お手は十日目ぐらいに教えて、すぐに覚えました。
頭はいいようです。

父は、おちょ―だいを教えました。
相変わらず、父にたいしては
ビビりですが、おしっこ漏らしはなくなってきました。

なにより、おちょ―だいが成功すると
大好きなパンの耳(家で焼いている、無塩・北海道産小麦・北海道のよつばバター使用)をもらえます。
ぱりぱりして、耳のところが好きなようです。

そして、2日で、おちょ―だいを覚えました。
すると、嘘のように静かになりました。

ねねが生前やっていたように、
大体のものに関して、
おちょ―だいが使えるようになりました。
まだ、ドアを開けてほしい時には仕えていませんが……
(猫のようにドアをガリガリします)

ああ、これでやっと、はなは、
家族の一員に慣れたように思いました。
躾と言うコミュニケーションのさなかに、
一番苦手な父とも仲良くなりました。
今では、父に遊んでもらいたくて
うずうずしています。

あとは、嬉しくなるとひとの手をかむのを辞めさせないといけない。
父が奮闘しています。
躾本どおりにやっても効果はありませんでした。
噛んでいいものを渡すと、そちらにシフトはしますが、
手を噛んではいけないという認識はないようです。
なかなか道は長そうですが、
まあ、父と母に頑張ってもらいましょう。

ねねを亡くして四カ月。
正直、今でもまだ、
新しい子犬を迎えるのは、わたしとしては早いと思っていますが、
確かに父は、ねねを亡くしてから、
認知症のように、ぼーっと一日無口に過ごしていました。
話のつじつまも合わなくて、
ああ、危険だなと思っていました。
母は、ねねを亡くしてから6kgも体重が落ちていました。
食欲がないと言って食べなかったのです。
その二つの症状が、いつの間にか改善されていました。

「はながやんちゃで困るから、
 ねねちゃん、ちょっといろいろ教えてあげて」

母は祈ったそうです。
実は、わたしも祈っていました。
ねねも、天に召されてからも忙しいでしょうね。
なんて、ふとおもったり。
毎日ねねを思う気持ちは一向に色あせることはありません。
でも、はなの教育をしないといけないと、
毎日毎日、必死に戦うので、
そのパワーが、二人を元気にしてくれるのでしょう
たまに、ねねに、生前好きだったプリンなどを供えていると、
はなは、
「何してるのかな?」
と、じっと見ています。
はなを抱っこして祭壇を見せてやり、
ねねの話をします。

ねねとくらべてはいけません。
はなは、はなです。
でも、ねねと似たこともよくします。
ねねが寝ていた場所で、はなもよく寝転がっています。
そんな時は、ふと、
ねねが教えてくれているのかな、なんて思って、
目頭が熱くなるのです。

ねねを愛しています。
はなも、しっかりかわいがります。

これでいいのだと、
私もやっとそんなきもちに、
だんだんと落ち着いてきました。
* 12:14 * comments(0) * - *
この十四日間
この十四日間、ものすっごいストレスとものすっごい忙しさでした。

というのも、5月19日、母親が半ば強引に子犬を我が家に迎え入れたのです。

ねねが亡くなってからまだ4カ月ですよ!?
私はまだまだ悲しみの淵であえいでいて、涙が滝のようにあふれて来たり、
気が狂いそうになるのを一人でじっと耐え忍んだり。
でも悲しいけれどねねの事を思っている時間が幸せなのです。

でも、母は、悲しみにはひたれないタイプ
哀しかったり嫌なことがあると逃げてしまわないと
精神が持たないのでしょう
防衛本能が働いたのか、とはおもいますが。

はじめは
「ねねに似た犬を探す」
というので、あんなめずらしい(なにが入ってたかわからないくらいの雑種)犬
さらに性格は優しくて面白くて、頭は天才的によかった犬は、
ほかいいるはずないから、見つけられるはずもないとたかをくくり、
まあ慰めになるなら、と
犬の譲渡会につれて行けと言われれば車を出し、
保健所の子犬を見に連れて行ったり。
職場が変わってしんどい中、
休みなしで母につき合いました。
それだけでも忙しかったんですが……。

その日、保健所から子犬が来たと電話をもらったと言うので
母を連れて行くと、
私たちの姿を見つけて
ケージの中の子犬らしき影が一匹だけ大騒ぎしています。
どの犬もみんなシラーっとして
その日に限って誰も吠えません。
いつもはすごく吠えますが。
さわいでいるのは
その子犬だけ。
後ろ2本足だけで立ち上がって、わたしたちに遠くから一生懸命アピールしています。
職員の人に案内してもらって見せてもらうと子犬は3匹。
内一匹は何度もお見かけしている子で、わたしたちとは相性が悪いというか
ものすごく逃げ回って触ることもできない。
損な性格の子で、もう4カ月になります。
その4カ月の身体の大きな犬の下敷きになっているのは、
白色の子犬推定3ヶ月。
そして、先程からアピールしまくってるの茶色い犬の姉妹です。
白い犬は4カ月の犬に上にのられていますが、4か月の犬は私たちを怖がって
おしっことうんこを大量に漏らすので、
白い子犬は黄色と茶色に染まってしまいました。
でも、黙ってじっと耐えています。
わたしはその、糞尿にまみれてもじっと耐えている小さな白い犬がいとおしくなり、
抱っこさせてもらいました。
汚れる覚悟の服装で行き、着替えも用意していましたので!
子犬は体温が高いと言いますがそれでも異常に高く、
心配だと職員に訴えますが、
大丈夫ですと言って心配すらしてくれません。
糞尿にまみれた白い犬を連れて帰って医者に見せてやりたいな
そう思ったのですが、
やはり
ねねへの気持ちが激しく沸き起こって
連れて帰る勇気が出てきません。
そうこうしているうちに、
母が激しく連れて帰ってアピールの子を
抱っこして「かわいいかわいい」と
連発します。
しかし落ち着きがなく、抱っこしてケージから出してもらえたんなら、
もう抱っこはいいから自由にさせろと暴れ出し、
大きな大人の犬がいる処で走り回って
場を騒然とさせ、
ワンワンギャンギャンさわぎまくります。
とりあえず私が捕まえると、
甘噛みではありますが手を噛む。

ねねは初めて抱っこした時、
全く無表情で、尻尾も振らず噛みもせずなめもせず、
ただ不機嫌そうに私たちを見上げました。

ねねとは全く別性格のこの茶色い犬を、
母は何と連れて帰るといいだしたのです。

何度も、本当にこの子でいいの?
お母さんが育てるんやで?
わかってるの?
と言っても聞きません。
ついには書類にサインして、
連れて帰ることになってしまったのです。

苦労は目に見えています。
いいえ、子犬が悪いのではなく、
それだけ元気いっぱいの子を、
母が育てられるとは思えなかったのです。

ねねは私が育てました。
ちょうど夏休み中で仕事がなかったのも幸いして、
ねねには朝から晩までつききりで
すべて世話をしました。
身体の弱いねねがいとおしくて、胃腸の弱い彼女のために手を尽くしました。
二時間おきにお粥を作って食べさせ、輸液に毎日通いました。
ねねは、甘えて、静かに、
私の膝の上で眠っていました。
母はその当時市役所で働いていました。
だから、母は犬を育てたことがないも同然だったのです。

茶色い子犬を家に連れて帰ると、
やはり犬を飼う心の準備ができていなかった父が、
子犬の真っ黒い顔を見て、鼻で笑いました。
「俺は知らん、かってにせいや」
子犬の運命はどうなってしまうのでしょう。
家族の愛情を食べて育つ子犬に、
愛情を注いでやらなければ!
トイレの準備やご飯の準備をしながら、
かわいがってやらないと、
かわいがってやらなくては!
と何度も自分に言い聞かせます。
でも、わたしの心の50パーセントは父と同じ気持ちなのです。
ねねがいとおしい。
母はねねを忘れようとしているとは思いませんが、
家族を守るようにしっかり生きていたねねが、
自分の家の中に知らない犬が家族として入ってきたことを
どう思うか。
死んでいても、
私の中ではねねは生きているのです。
子犬も空気を察して、
何となくおとなしくしています。
父が、それでも子犬がかわいそうだと思ったのでしょう。
少し、受け入れる気持ちになったのかもしれません。
「ねねに、挨拶させろ」
とねねの遺骨と写真を指さします。
ところが、空気の読めない母は、
「厳しく躾けるんだから、
当分家には上げないの!」
すると父はへそを曲げてしまいました。
ねねは、父が名づけました。
この子犬も父に名づけてもらえれば、
父に受け入れられるかもしれない。
「お父さん、この子の名前つけてやって」
そう頼むと、へそを曲げてしまっている父は、
にくにくしげに
「ねねでええやろ! しるか!」
と自室にこもってしまいました。

父の仕打ちをひどいと思いつつも分かるという気持ちもあり、
子犬を愛してやらなくてはと思いつつも、
私が愛するのはねねだけだと言う気持ちが沸き起こります。
そう、早すぎるのです。
きちんと喪に服させてほしかった。
なのに、母は子犬が来たことがうれしいらしく、
機嫌良く過ごしています。

子犬は、空気を読んでおとなしくはしていました。
出されたご飯も喜んで食べました。
でも、玄関の土間にいるのです。
家には上げてやっていない。
最初の夜はそこで一人で眠りました。

ねねは来た日から夜泣きなんてしなかった
というか、人間を信用していなかったから一人にさせて、という
クールな感じでした。
でもこの性格の子犬が一人で寝るのがかわいそうで、
さらにあまりに静かなので、
明け方4時に、そっと覗きこんでみました。
すると、用意された布団の上ではなく、
冷たい土間の上で眠っています。
私の気配に気づいて眼をさましました。
お腹をこわさないか心配で、子犬を膝にだいて、
子犬が寝ていたところにマットを敷いて寝どこにし、
そこにまた戻しました。

それがいけなかった!
「くぅ〜ん、くぅ〜ん」
甘えた鳴き声が家じゅうに響きます。
うっかり私が膝に抱いたせいで寂しさが募ってしまったようです。
その日から、子犬をどこで寝かすか、
家族でてんやわんや。
2日目の夜は母と共に寝かしたのですが、
その翌朝から急に暴君ぶりを発揮し、
母に偉そうな態度をとるので、
私はやはり一人で寝かせるべきだと言い、
3日目の夜は何時間でも、
キャインキャインと鳴いて家族を寝かせません。
父はますます不機嫌になります。
でも、一人で寝た日の翌朝は
大変おりこうさんです。
名前はその頃になってやっと
「はな」と決まりました。

はなはご飯をしっかり食べます。
でも、がりがりです。
眼の色も異様に薄く、あまり見えていないようです。
自分の頭より上のものを目で追うことがありません。
後ろ脚の関節がぐらぐらしています。

保健所の職員さんから聞いた話を総合すれば、
はなは、大阪府の箕面の山奥に住む野犬の産んだ子で、
母犬は逃げたが子犬は捕獲したと。
捕獲したはなと兄弟は、
一か月以上箕面の保健所にいた。
そして、3ヶ月齢くらいになって、
大阪府が管轄している森の宮の保健所「動物管理指導センター」
に連れてこられて、わたしたちに出会ったのでした。
それにしてはガリガリで足腰が弱い。
推測するに、
狭いケージに入れっぱなしで、ごはんもろくにあたえてもらえなかったのではないか
と思うのです。箕面で、です。あくまでも憶測、ですが。

さて、はなは昼間、部屋に挙げてもらえるようになりました。
というのも、やっとお風呂に入れたからです。
綺麗になったので、部屋にあげてやると、一気に走りだします。
しかしその様子がちょっと異様で、
いつまでたっても走りっぱなし、
ねねを心臓病で亡くした我が家の人間は気が気ではありません。
はなを抱き上げると、ガリガリの肋骨の中で、
心臓がとっとっとっとっと、ものすごく動いています。
息も荒くて苦しそう。
でも、床に置くとまた走りだします。
ついに母が、声を荒げました。
「家のなかをはしるんじゃありません!」
「おこったらあかん、お母さん」
「だって、こんな落ち着きのない犬! こんなにキレて走り回るんやったら、
 この犬にするんじゃなかった」
「ひどいこと言わないで! 自分がこの子って選んで連れてきたんでしょ!
 いっとくけど、ねねだって、3ヶ月くらいには走ってたよ! 
 確かにこんなに狂ったみたいに走ってたわけじゃないけど、
 でも、子犬は走るもんだよ!」
「お座りって言ってもしないし!」
「おしえてないやんか! もう、何言ってるのよ!」
母は焦っていたのだと思います。
子犬を受け入れない父に、よい犬だと思わせたくて、
必死でした。でも、子育て同様ゆっくり焦らず、が基本のはず。
私たちの喧嘩を、はなはじっと黙って聞いていました。
私は疲れきって、
自分の部屋に引きこもりました。
ねねに話しかけて、涙が止まりません。
暫くすると落ち着いてきましたが、
やはりこの家に次の犬を迎えるべきではなかったのだと
そう言う気持ちが沸き起こります。
わたしは、傷ついていました。
ねねがかわいそうだと思いました。
母のわがままに振り回される自分がかわいそうだと思いました。

数時間たって、1階に下りると、
母がはなを抱きしめていました。
泣いています。
「この子、さっき、鏡に映った自分の姿を見て、
 寂しそうにキュンキュン泣いて、
 前足で撫でてみたりなめてみたりして……。
 保健所から脱出して、きっといい家に引き取られると期待していたのに、
 来たら思ったような家じゃなかったと思ってるんじゃないかな。
 自分の兄弟のいる保健所に帰りたいと思って、
 寂しがってるみたい」
それを聞いた時、
私は本当に悪いことをしたと思いました。
はなは、きっと必死になって、保健所から出たくて、
私たちの家族になろうと決めて、それであんなに連れて帰ってアピールをしていたのに、
そんなにさびしい思いをさせているなんて、
私の、ねねへの気持ちが、はなにつたわってしまったのかもしれない。

私は、はなを抱きしめました。
「帰りたいなんて思わないで。
 せっかく来たんだから、あなたが私たちを選んで、
 家族になりたいと思ったから、あんなに連れて帰ってと言ってたんでしょう?
 寂しい思いさせたね、ごめんね。ここにいて、ね」

その日から、はなは少し、おとなしくなりました。
私たちの目をじっと見つめるようになりました。

これで心が通じたのだ。
そう思ったのです。

ええ、その時は。
      ……つづきます。
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